こんにちは、ゆらなべです。
住宅ローンを借りると10年間(令和2年12月31日までに入居なら13年間)所得税が一部控除されるということは知っていても詳しくは知らないという人が多いのではないでしょうか。
国税庁のホームページの記載から、注文住宅を建ててこれから住宅ローンを契約する方を前提に内容を読み解いていきたいと思います。
注文住宅の住宅ローン控除を読み解く
先ほど、住宅ローンを借りると所得税が一部控除される、という風に書きました。
実際には国税庁のホームページでは以下のように記載されています。
個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をした場合で、一定の要件を満たすときは、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する「住宅借入金等特別控除」又は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」の適用を受けることができます
-国税庁のホームページより-
以下のような控除があり、主に「住宅借入金等特別控除」が該当します。
- 住宅借入金等特別控除
- 特定増改築等住宅借入金等特別控除
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
住宅借入金等特別控除
簡単に言うと、個人が新築、取得又は増改築等を行った場合、条件を満たせばローンの利息に相当する部分を国が補助します、というもので、補助は所得税の控除という形で行われます。
後でも触れますが、通常は10年間、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの居住開始で消費税10%で支払っている場合は13年間控除が受けられます。
また、控除には上限がありますが以下に該当すると「認定住宅」と呼ばれ、「認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例」という特例で上限が少し上がります。
- 認定長期優良住宅(長期優良住宅の普及の促進に関する法律に規定する認定長期優良住宅に該当する家屋)
- 認定低炭素住宅(都市の低炭素化の促進に関する法律に規定する低炭素建築物に該当する家屋又は同法の規定により低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当する家屋)
「長期優良住宅」は最近よく施工会社のパンフレットなどでよく見かけるのでご存じかもしれませんが、「低炭素住宅」は太陽光発電や高断熱など省エネの対策がされて二酸化炭素の排出を抑えた住宅を言い、それらの認定を受けると対象になります。
住宅ローンを借りなくても受けられる控除は注意が必要
最初に挙げた5つのうち「住宅借入金等特別控除」と「特定増改築等住宅借入金等特別控除」はお金を借りることが前提ですが、以下の3つはお金を借りなくても控除を受けることができます。
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
この中でも「認定住宅新築等特別税額控除」は注文住宅でも受けることができる控除ですが注意が必要です。
これらはお金を借りてない人向けの控除で、かかった費用の一部を補助しようというものです。
最初の年、場合によっては次の年だけ控除が行われるもので、今であれば最大でも控除額が65万円と「住宅借入金等特別控除」と比べて初回だけ見れば高いですが合計額では圧倒的に控除額が少ないのです。
(特例で計算すると最大で、初回50万、合計600万)
そして「認定住宅新築等特別税額控除」を受けると「住宅借入金等特別控除」が受けられない、というのが最大の注意ポイントです。
「住宅借入金等特別控除」の条件に該当しない場合以外は「住宅借入金等特別控除」のほうがお得です。
勤務先や親族・知人からお金を借りた場合
利息分を補助するものなので、勤務先からお金を借りた場合に利率が0.2%未満だと「住宅借入金等特別控除」を受けることができません。
また、親族や知人から借りた場合も「住宅借入金等特別控除」を受けることはできません。
実際のところどれくらい控除されるのか
実際のところは控除の対象となる所得税次第ですが、控除の上限は以下の方法で求めます。
控除額の計算方法
控除額の計算方法は住み始めた時期によって決まります。
すでに控除を受けている方の場合はそれぞれの時期に応じた計算となっていますが、これから住み始める場合だと次の2パターンとなるかと思います。
また、国や地方自治体などから補助金を受けた場合、親などから贈与を受けた場合はその金額を差し引いて計算されるので注意が必要です。
令和元年10月1日から令和2年12月31日まで
【特別特定取得の場合】
1~10年目
年末残高等 × 1%
※上限は40万(認定住宅の特例の場合は50万)
11~13年目
以下のうち、金額が少ないほう
- 年末残高等〔※〕 × 1%
- (住宅取得等対価の額 - 消費税額〔※) × 2% ÷ 3
※上限4,000万円(認定住宅の特例の場合は5,000万)
【特別特定取得ではない場合】
1~10年目
年末残高等 × 1%
※上限は40万(特定取得以外の場合は20万)
※認定住宅の場合は上限50万(特定取得以外の場合は30万)
令和3年1月1日から令和3年12月31日まで
1~10年目
年末残高等 × 1%
※上限は40万(特定取得以外の場合は20万)
※認定住宅の場合は上限50万(特定取得以外の場合は30万)
特定取得
取得費用に含まれる消費税が8%または10%の場合の住居取得のことを言います。
特別特定取得
取得費用に含まれる消費税が10%の場合の住居取得のことを言います。
控除上限額より実際の所得税が少なかった場合
こちらは総務省のホームページに記載がありますが、住民税の控除を受けられる場合があります。
前年分の所得税において控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税で控除されます。
-総務省のホームページより-
あくまでも翌年度ですが、控除しきれなかった額を住民税から控除されます。
控除しきれなかった額は市区町村が把握できる仕組みがあり、新たに手続する必要はありません。
控除額は以下のようになっています。
特定取得または特別特定取得の場合:
前年分の所得税の課税総所得金額等の7%(136,500円を限度)
上記以外の場合:
前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円を限度)
控除額の計算例
仮に住宅ローン3,000万を35年返済で金利0.475%の元利均等返済で返した場合の例を計算します。(毎月返済額はおおよそ7.8万円)
※13年目の年末残高を2,000万を切るために金利を低くしています。
建物金額(税抜)も3,000万とします。
給料の課税対象額は年単位で5,000円ずつ上げて計算します。
※配偶者、扶養家族は考慮していません。
1年目
1年目は9~12月の4回の返済で年末残高がおおよそ2,973.8万円です。
控除額は1%なので297,300円となります。(100円単位で切り捨て)
仮に毎月の給料の課税対象額が25万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月6,530円とボーナス29,890円となり
6,530 × 12 + 29,890 × 2 = 138,140円
となります。控除しきれない金額は翌年の住民税の控除となるため、
所得税控除:138,140円 翌年の住民税控除: 136,500円(上限)
となります。
2年目
2年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ2,894.7万円です。
控除額は1%なので289,400円となります。(100円単位で切り捨て)
仮に毎月の給料の課税対象額が25.5万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月6,750円とボーナス31,370円となり
6,750 × 12 + 31,370 × 2 = 143,740円
となります。控除しきれない金額は翌年の住民税の控除となるため、
所得税控除:143,740円 翌年の住民税控除: 136,500円(上限)
となります。
3年目
3年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ2,815.2万円です。
控除額は1%なので281,500円となります。(100円単位で切り捨て)
仮に毎月の給料の課税対象額が26万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月6,960円とボーナス32,840円となり
6,960 × 12 + 32,840 × 2 = 149,200円
となります。控除しきれない金額は翌年の住民税の控除となるため、
所得税控除:149,200円 翌年の住民税控除: 132,300円
となります。
ここで上限に達しなくなりました。
10年目
10年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ2,248.2万円です。
控除額は1%なので224,800円となります。(100円単位で切り捨て)
仮に毎月の給料の課税対象額が29.5万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月8,140円とボーナス45,440円となり
8,140 × 12 + 45,440 × 2 = 188,560円
となります。控除しきれない金額は翌年の住民税の控除となるため、
所得税控除:188,560円 翌年の住民税控除: 36,240円
となります。
11年目
11年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ2,165.6万円です。
年末残高の1%は216,500円となります。(100円単位で切り捨て)
しかし、11年目からはもう1つの計算方法と比較して少額のほうが採用されるため、
建物金額3,000万 × 2% ÷ 3 = 200,000円が控除額となります。
仮に毎月の給料の課税対象額が30万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月8,420円とボーナス47,100円となり
8,420 × 12 + 47,100 × 2 = 195,240円
となります。控除しきれない金額は翌年の住民税の控除となるため、
所得税控除:195,240円 翌年の住民税控除: 4,760円
となります。
12年目
12年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ2,082.7万円です。
年末残高の1%は208,200円となります。(100円単位で切り捨て)
しかし、11年目と同様に、200,000円が控除額となります。
仮に毎月の給料の課税対象額が30.5万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月8,910円とボーナス48,750円となり
8,910 × 12 + 48,750 × 2 = 204,420円
となります。所得税額が控除額を超えたため、
所得税控除:200,000円 翌年の住民税控除: 0円
となります。
13年目
13年目は1~12月の12回の返済で年末残高がおおよそ1,999.3万円です。
年末残高の1%は199,900円となります。(100円単位で切り捨て)
200,000円を下回ったため、199,900円が控除額となります。
仮に毎月の給料の課税対象額が31万、年2回のボーナスが毎月額の2回分で計算すると、所得税は毎月9,160円とボーナス50,960円となり
9,160 × 12 + 50,960 × 2 = 211,840円
となります。所得税額が控除額を超えたため、
所得税控除:199,900円 翌年の住民税控除: 0円
となります。
住宅ローン控除をうけるには条件がある
控除は誰でも受けられるわけではなく以下の条件があります。
- 建物の引き渡しから6か月以内に住み始めること
- 適用を受ける各年の12月31日(死亡した場合はその日まで)まで引き続いて住んでいること
- 1年のの合計所得金額が、3,000万円以下であること
- 借りたお金を10年以上の期間で分割して返済する契約になっていること
- 住宅の床面積(登記簿に表示されている床面積)が50平方メートル(15~16坪)以上
- 店舗や事務所などと併用の場合、床面積(登記簿に表示されている床面積)の2分の1以上の部分が自分の住居用であること
- 住み始めた年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと
また条件を満たしていても、対象となる住居を複数持っている場合でも適用は主に住んでいる1つのみとなります。
こういう時に控除はどうなる?3選
上で記載している条件のうち、マーカーを引いた部分について次の3つの状況の場合、条件が満たせなくなります。
こういった場合、どうなるのでしょう。
災害で住居に住めなくなった場合
災害で住めなくなっても基本的には控除を受け続けることができますが、土地やその土地に新たに建てた建物を事業、賃貸の目的で使用したり、譲渡する際に控除を受けたり、別の建物で「住宅借入金等特別控除」を受ける場合などに該当する年は控除を受けられない場合があります。
転勤になってしまった場合
単身赴任の場合
家族が引き続き対象の建物に住み続ける場合は控除を受け続けることができます。
家族全員で転居の場合
転居している期間は控除を受けることはできませんが、転居前に手続きをしておくと戻ってきてからの残りの期間は控除を受けられるようです。
借り換えを行う場合
新しいローンが明らかに元々のローンの返済に充てられている場合は、新しいローンが「住宅借入金等特別控除」の条件を満たしている場合には控除を受けることができます。
控除が10年または13年なのでないとは思いますが、新しいローンの返済期間が10年未満だと控除を受けられないことになります。
まとめ
長々と書きましたが、住宅ローンを借りて注文住宅を建てた人は所得税の控除を受けることができ、控除しきれなかった分は翌年の住民税が控除されます。
上の計算例の場合でも300万くらいの控除となるため、なかなかな金額です。
「認定住宅新築等特別税額控除」など別の控除を受けてしまうと受けれなくなるため、注意が必要です。
本投稿が今後の資金計画の参考になれば幸いです。
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